番組制作者の声

テレビ朝日
報道局報道番組センター「サタデーステーション」
若林奈織さん

2024.10.3 wed

テレビ局を目指したきっかけ

幼いころから放送局で働くということには漠然とした憧れがありました。特に映像で表現するといったことに興味を持ったのは中学3年生。当時放送していた歴史ドラマに夢中になりました。今までは教科書でしか見たことのなかった偉人たちに命が吹き込まれ、笑ったり、怒ったり、悲しんだりする。そういった人間ドラマに魅せられ、「映像って面白い!」と感じたのがきっかけです。

テレビ局に入って

ご縁があってテレビ朝日に入社し、ありがたいことに希望通り夕方の報道番組に配属されました。1年目はADとして、資料の準備やお弁当の発注など、一言でいえば「雑用」が仕事です。最初は「私が放送局に入って叶えたかったことと違う!」と焦りを感じることもありました。しかし、今思い返せば、テレビを作るうえでの基礎を学べる時間だったと思います。テレビの仕事は1人だけではできません。ディレクターや演者、カメラマン、編集マンなどと、どんな時もチームプレーが必要となります。そんな時、相手の状況や気持ちを汲み取りながら仕事を進めることが必要です。ADとして過ごした時間は、そうした制作現場を広い視野で見ることができる貴重な時間だったと感じています。

ディレクター・記者として

2年目からはディレクターになり、様々なニュースの現場に足を運びました。特に印象的なのは、2年目の夏に出した終戦記念日企画です。「戦前・戦時中の白黒写真をAIでカラー化する取り組み」を取材しました。カラー化された白黒写真は、なぜか自分事のように身近に感じさせる力があります。そして、その日常が戦争によって奪われてしまった…。被害を受けた街並みの映像も戦争の恐ろしさを伝える力がありますが、このように「戦争によって失われたもの」を伝えることも意味があるのではないか…そう思い急いで企画書を作りました。そして、取材を進める中で、原爆でご家族を失った男性にお話を伺うことができました。ご家族を失われた深い悲しみがありながらも、カラー化された写真を見て、記憶が蘇ったように家族の事をお話される男性の優しい笑顔は今でも忘れることができません。放送後、男性から「生きていてよかったです」という連絡をいただいた時は、とにかく嬉しくて涙が出たのを覚えています。
3年目には、社会部に異動となり、警視庁の捜査1課の担当になりました。捜査1課というのは、主に殺人や強盗などの強行事件を担当する課です。そのため、取材するうえで必ず被害者と加害者が存在します。特に被害者への取材というのは、私自身が再度その方々を傷つけてしまうのではないかといった恐怖を常に持ち合わせていました。取材するべきなのか、先輩に泣きながら訴えたこともあります。そうしたことから、割り切れない自分の弱さに悩んだこともありました。しかし、ある日先輩から「若林は、非情になれない所もあるけれど、被害者や遺族の立場に立って一緒に考えて涙を流せる」と言葉をかけていただきました。この言葉のおかげで自分の弱みだと感じていた部分、それが自分の強みでもあるのだと気づくことができたのです。被害者やご遺族の気持ちに寄り添って、そして相手が話したいタイミングでしっかりと耳を傾ける、そういった取材ができる人間になろうと強く感じました。

警視庁クラブ時代 尊敬する先輩たちと

突然の異動…人事部へ

仕事に慣れてきた頃、突然、人事部への異動を命じられます。異動後、180度変わった生活スタイルに困惑しましたし、画面越しで活躍する仲間の姿を見て「異動がなければ、あの現場に私が行っていたのかもしれない…」と感じることもありました。
しかし、人事部での仕事も新しい学びの連続でした。私が異動したのはちょうどコロナ禍で、働き方の多様性が広まりつつある時期でした。これまでの制度を改革していかなければならない、まさに過渡期でした。その中でも採用活動や研修制度に関わらせていただきました。社内の声に耳を傾け、その声をヒントに解決策を練っていく…。そういった意味で、人事の仕事は記者の仕事に少し似ているなと感じていました。人事の仕事を通して社内の様々な人と知り合い、これまでは報道としての視点でしか見れなかったことも、多角的にとらえることができるようになった気がします。

2023年新潟での大雪取材

再び報道へ 今も学びの連続

去年7月から再び報道局に戻り、情報番組の「羽鳥慎一モーニングショー」でVTRやパネルの担当をしていました。番組の目玉でもあるパネルは、文言やイラストの位置、全体の流れなど、細部までこだわり、何度も何度も修正を重ねます。「どうすれば伝わりやすいか」視聴率1位を取り続ける番組だからこそのノウハウを学ぶことができたと思います。
そして、今は報道番組の「サタデーステーション」でVTRを担当しています。週末の番組だからこその深堀取材は、ニュースの現場で生きる人々の人間ドラマをより丁寧に伝えることができます。番組が異なるだけで、取材方法も違えば、画の撮り方も違う、7年目になっても新しい学びの連続で、新鮮かつ楽しい日々を送っています。

花火大会では外国人観光客に密着
自分でカメラを回すことも

また、「バラバラ大作戦」での新たなチャレンジ枠「バラバラマンスリー」にてドラマの企画を放送しました。左遷された実況アナウンサーが世の中の復讐を実況し、声を武器に悪を成敗するといった内容です。お笑い芸人コットンの西村真二さんにご出演いただきました。ドラマの撮影は初めてで、サポートで入ってくださった監督やプロデューサー、脚本家の方々の力を借りながら、無事放送することができました。また企画を出してトライしたいなと考えています。

メディアを目指す皆さんへ

以前、テレビ朝日の新卒採用サイトでは「テレビ局はおもちゃ箱だ」というキャッチフレーズがありましたが、まさにその通りだと思います。主に報道の仕事についてお話しましたが、テレビ局にはほかにもバラエティやスポーツ、ドラマ、営業、編成…などと数多くの仕事が存在します。そして、たくさんの仕事があるからこそ、私たちは自分たちに合った多様な働き方を叶えることができるのです。1つの道を極めるのもよし、私のように様々な部署で経験を積むのもよし、どれが正解だなんて決まっていません。色んな人がいるからこそ、それが化学反応を生み出していくのです。 学生時代の私は、放送局は何か秀でた才能がある人が働ける場だと思っていました。もちろん、そういった天才も必要不可欠ですが、私のような“普通の人”も必要だと感じています。視聴者が今何を求めているのか、常に視聴者の視点に立って考えることが何よりも大事なことです。「私なんかが…」と自信がない方も、ぜひ “普通であること”を武器に挑戦してみてください!

台風10号では静岡駅前で中継

プロフィール

テレビ朝日報道局報道番組センター「サタデーステーション」ディレクター

1995年 滋賀県彦根市出身、社会学部メディア学科卒業後、2018年にテレビ朝日に入社
2018年 入社~報道番組センター「スーパーJチャンネル」担当
2020年 ニュースセンター社会部 警視庁捜査1課担当
2021年 人事局人事部 新卒採用・研修担当
2023年 情報番組センター「羽鳥慎一モーニングショー」ディレクター
2024年 報道番組センター「サタデーステーション」ディレクター 台風などの現場取材を主に担当
社内公募「バラバラマンスリー」にてドラマ企画「あなたの復讐、実況します!」(全3話)放送