《後編》

― 『ＦＮＳ２７時間テレビ』について

田中：ぶっちゃけると、放送のタイムテーブルが決まったのは放送の５日前とかだったり。当日放送中もフィナーレの『カギダンススタジアム』のＶＴＲの編集を同時進行で行っていたり。肉付けの部分は文字通りギリギリまでやっていました。だからこそ、通常１人で行う総合演出が、今回は同期の杉野と僕、２人居て本当に良かったなと思います。1人が生放送の対応をしていたら、もう１人が次の企画のスタンバイをして、みたいな。その連携があったからこそ乗り越えられましたね。

杉野：27時間の準備をしながら、『新しいカギ』のレギュラー放送も並行して行うことも大変でした。体力的にもそうですが、1回で終わってしまう特番と放送がずっと続いていくレギュラー番組を作っていくのは、頭の使い方が異なるので。生放送というのもいつもの放送とは異なる部分で、とにかく事故を起こさないように、シミュレーションやリハーサルなどは入念に行いましたね。面白いものを作りたいというのももちろんですが、大前提、テレビなので事故を起こさないという基礎も大事にして制作していました。

杉野さん仕事風景

田中：あと「若い世代へのリスペクトを忘れない」ということもとても大切にしていました。例えばオープニングでアーティストが高校生のブラスバンドとの生演奏で歌いながら、メインＭＣが出てきて、そこをオーディエンスの高校生が受けるシーン。実は歌っているアーティストよりも高校生のカットの方が長いんです。若者ファーストというか、若者を番組の添え物にしたくなかった。レギュラー放送の『新しいカギ』も今でこそ「学校番組」というひとつのジャンルになって、それが「クイズ番組」や「グルメ番組」みたいに数あるジャンルのひとつとして表現されますが、僕はもっと当たり前のように「テレビが若者に向いていて良い」「若者のもので良い」と思うんです。だからこそ今回の27時間の構成はものすごくこだわりました。

杉野：色々とお話してきましたが、放送を終えた感想は「とにかく楽しかった！」です。制作者としてフジテレビに入って、伝統的な『ＦＮＳ27時間テレビ』というものをつくることができ、それを無事に放送することができた。大変なこともありましたが、また何度でもやりたいです。

田中：杉野が言うように、めちゃくちゃ楽しかったですね。今でもたまに放送当日を思い出してぼーっとしちゃうくらい、刺激的な時間でした。改めて思いますけど、これ仕事なんだって。お金のために仕事をするんじゃなくて、これ仕事だったんだ、お金もらってるんだ、って後から気付くくらいです。そんな最高な人生ないですよ。たぶん自分の走馬灯に出てくるくらい良い時間で、幸せでした。

― メディアを目指す方へ

田中：学生時代、就活をしていて、最後の方とかは極端ですけど「テレビ局に入れなかったら終わりだ」ってくらいに思っていました。でも社会人になった今、もしかしたらどこに行っても、どんな会社に入っても楽しいんじゃないかなって思います。もちろんテレビ制作はとても楽しいのですが、今の仕事も、「第一志望だったから、テレビの仕事だから楽しい」というよりも、一番は「目標を共有できる人たちと、一緒になって成し遂げるプロセスが楽しい」と思ってやっているんですね。それは他業種、他社の人たちもきっとそうだと思うんです。だから、「未来って意外と明るいですよ、大人って意外と楽しいですよ、だから大丈夫」とお伝えしたいです。

杉野：メディアは時代と共に変わり続けていて、そしてテレビに限らず、ラジオ・新聞・雑誌などさまざまなものがありますよね。もし、映像が好きだったらテレビ業界で働くのがおすすめです。YouTubeとかサブスクリプションサービスとか乱立している時代ですが、テレビ業界はそういった様々な映像の基礎から応用までの大半を学べる、それを学ぶ過程も含めて仕事にできる良い環境なので、映像が好きな人におすすめしたいメディアだなと思います。

左：杉野幹典さん、右：田中良樹さん

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