番組制作者の声
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読売テレビ放送
報道局
櫻 茜理さん
― テレビ局を目指したきっかけ
両親がテレビ局で働いていたため、幼い頃から業界に漠然とした憧れがありました。いざ就職活動の時期になり、改めて自分を見つめ直した時、自分は「何かを伝えること」が好きで、「影響力・自社制作力が強いテレビ局に入って、一人でも多くの人を幸せにできる仕事に携わりたい」と思い、進路を決めました。
― 大阪の「準キー局」にした決め手は?
「準キー局」は、キー局に次ぐ発信力がある(特に読売テレビ放送(ytv)は在阪の中でも全国ネット番組が多い)一方で、地域に根差した発信ができるという、「大きすぎず・小さすぎない」点に魅力を感じました。
また、採用面接の際にytv社員の雰囲気が温かく、私自身も変に緊張したり自分をよく見せようとしたりせず ありのままの自分で臨むことができました。その結果、受け入れてもらえたことは「ご縁なのだろうな」と思い、決めてとして大きかったです。私は岩手県出身で、大学も東京だったため、関西には縁もゆかりもありませんでしたが、人事の皆さんのサポートが手厚かったおかげで、新天地で生活していくことに自然と不安を感じませんでした。
― 元々報道志望では無かった、けれども…
報道は、事件・事故など社会の辛く悲しい部分に関わることが多くしんどいイメージが強かったため、当初は志望していませんでした。ただ、ある取材をきっかけに気持ちが変わりました。
大阪府警の担当になって半年ほど経った頃、女性が密室空間で性犯罪被害に遭う事件があり、容疑者の男が逮捕されました。容疑者は一部界隈では名前が知られているような人物で、その立場を利用した悪質な犯行でした。警察幹部から以前「性犯罪被害のうち、世の中に明るみに出るのは氷山の一角」という話を聞いていたこともあり、「本当はもっと被害に苦しんでいる人がいるのではないか」と気になりました。取材を続けていくと、既に発表されている事案とは別の被害者と出会うことができました。「自分も被害を訴えたい」と取材に応じ、まだ警察が明らかにしていなかった容疑者の犯行パターンについて教えてくれました。
一方で、「警察へ相談するかどうかは当時の犯行の証拠が無いから迷っている」という悩みを打ち明けてくれました。警察側は実際どうなのかが気になり、性犯罪被害の事件を担当する警察官、さらには性犯罪被害者を支援している団体を取材。すると、「どんなに些細な情報でも安心して打ち明けてほしい」と考えていることを知りました。両者の思いを社会へ伝えたいと、被害者から教えてもらった事件の続報と共に5分程のVTRにまとめて報道しました。放送後、警察のもとに「自分も同じような被害を受けて申告する勇気が無かったが、放送を見て相談してみようと思った」などという連絡が40件以上来たということでした。また、話を伺った被害者からも「取材をきっかけに勇気が出て警察へ相談に行くことができた」と連絡がありました。それ以来、辛く悲しい事件こそ「どうしたら被害者が救われるのか」「そもそも事件を起こさないためにはどうしたらいいのか」などと考えるようになり、自分自身の仕事における使命感に繋がりました。
自分の疑問や課題について、とことん取材することができる。さらに、それを放送した結果、時に社会へ影響を与えることができる―。報道記者は、本当にやりがいのある仕事です。ただ、これまでに、自分の不注意などによって放送内容に批判の声を頂くこともありました。テレビの影響力は想像以上で、新人であってもベテランであっても会社の名前を背負って仕事をしている責任があることを痛感しました。それでも、「放送を観て感動した・気持ちが救われた」などという声を頂いた時、報道を通して一人でも多くの人を幸せにしたいという思いが勝り、今この道を歩んでいます。
― 読売テレビ放送史上、最年少でニューヨーク支局へ
「こんなつもりじゃなかった」ばかりで恐縮ですが…海外特派員こそ、まさか自分がなれるとは思っていませんでした。海外旅行の経験はほとんど無く、英語も得意とは言えず…どこか遠い存在のようにすら考えていました。ただ、記者としての経験を積み重ねる中で「もっと色んな現場を見て知り、自分の言葉で伝えられる幅を広げたい」と考えるようになっていました。特にNY支局は、何かあればアメリカ国内だけでなく世界各国を飛び回って取材するポジションであると聞いていたため、もし選ばれたら目標に大きく前進できると考え、志望しました。
加えて、NY特派員はアメリカ大統領選を節目に交代となるため、任期は4年間。今回募集があった時点で私は27歳で、4年後は31歳。選択次第で今後のライフプランが大きく揺れ動く時期だと考えた時、「少しでも挑戦したい気持ちがあるならば、チャンスが開かれている時に飛び込まないと後悔する」と思ったことも、背中を押しました。結果この年次で行かせて頂けるのは、若手のうちからチャンスが広がっている+挑戦したい気持ちを応援してくれるytv報道の環境だったからだと思い感謝しています。
「本当に自分に務められるのか」という不安は、ずっとあります。特派員は多くの人が目指している仕事だからこそ、今回自分が行くことで叶わなかった人たちの気持ちもしっかりと受け止めなければならないと思っています。何より、最年少にも関わらず選んでくださった上司への感謝を忘れず、責任を持って任期を全うしたいです。とはいえytvの採用面接時と同様、変に緊張したり自分をよく見せようとしたりせず、ありのままの自分でいることを忘れずに、精進していきます。
― 学生の皆さんへのメッセージ
先述の通り、放送局は若手のうちからチャンスが広がっています。私も海外特派員の機会だけでなく、生中継や記者解説、全国ネット番組のドキュメンタリー制作など、本当に沢山の経験をさせて頂きました。でもそれは決して私1人の力ではなく、一緒に良いものを作ろうと切磋琢磨して下さったデスク・記者の先輩方やカメラマン、編集マンなど、多くの方々の支えのおかげです。そういう面でも、夢を応援してくれる職場です。
世の中の話題の最前線に飛び込み、沢山の人に出会って色んな価値観に触れる―それが楽しいと思える人は誰でも向いている仕事だと思います。この文章を最後まで読んでくださった方といつか一緒に働けることを楽しみに、私も頑張ります。
プロフィール
岩手県盛岡市出身。文化構想学部を卒業後、2020年に読売テレビ放送に入社。報道局に配属。記者として大阪府警や災害報道などを担当し、番組内での記者解説やドキュメンタリー制作にも携わる。2025年から海外特派員としてニューヨーク支局へ。