人気番組「ブレバト!!」と
「家、ついて行ってイイですか?」の演出2人が語る
「テレビ・ラジオの魅力」
2019.11.23 sat
キャリタス就活2021インターンシップ&仕事研究

2020.02.19 wed

読売テレビ放送(ytv)・西田二郎さん(以下、西田)
こんにちは。本日モデレートします西田二郎と申します。読売テレビでダウンタウンDXを長年やってまいりました。
それではお2人を紹介します。毎日放送の東京支社東京制作部の水野雅之さんとテレビ東京の制作局CP制作チームの高橋弘樹さんです。
今日は、テレビって最近なんか元気ないんじゃないかと思われている中で、テレビの未来をしっかり考えてるお二人にお越しいただきました。まずは、今どんな仕事してるのかなど、各々説明をして頂きたいと思います。

毎日放送(MBS)・水野雅之さん(以下、水野)
毎日放送の水野と申します。よろしくお願いします。僕の今の仕事は、プロデューサーの仕事、それから演出です。演出というのは番組の中身、内容、全ての総責任者です。テロップ、出る人、企画を全部決めてる人間、それを毎日やっております。現在は、木曜日にやっている「プレバト!!」、俳句のイメージが多分強いかな、あとは日曜日の「林先生の初耳学」、滝川クリステルさんに出演いただいていた火曜日の「教えてもらう前と後」という番組、この3つを手がけております。よろしくお願いします。

テレビ東京・高橋弘樹さん(以下、高橋)
テレビ東京の高橋と申します。僕は入社15年目でADの時は「テレビチャンピオン」、ディレクターとして「空から日本を見てみよう」、あと動物番組を担当しました。その後「家、ついて行ってイイですか?」で演出とプロデューサーをやってます。演出の仕事は、ディレクターが終電後の街で家について行ったVTRを見て、「こうしよう、ああしよう」って話のストーリーを決める仕事です。プロデューサーの仕事はブッキングです。タレントさんを決めたり、お金の管理をしたりする仕事をしています。

西田
ここからは、ある程度自由にテレビの魅力やテレビの仕事、テレビの未来について思う存分話してもらえたらと思います。最近お仕事していて、昔と変わってきてるなと思うような所ってありますか?

水野
視聴率を取るのがとっても難しくなりました。入社した時の感覚でいうと視聴率15%の感覚が、今で言う二桁の感覚ぐらいでしょうか。それから若い視聴者が離れてる感覚ありますね。でも一方で、世の中の人たちの話題にはテレビがきっかけのものも多くて、僕らはそことどう向き合うか試行錯誤している感じがします。

高橋
最近はテレビが家に無いっていう若い方が増えてきたのは感じますね。ただネットで動画も見られる時代だからでしょうけれど、僕はテレビ局員だからテレビ番組作るのが仕事なんですけど、最近はネットの動画も作るようになっています。自分の企画が色々やりやすくなっていますね。
あと、テレビ東京は海外のテレビ局に企画を出して海外でテレビ番組を作ったり、いろいろやることが増えています。今までは関東の地上波だけでしたが、世界やネットなど出口が増えてるなって感じます。

西田
テレビってもう今は地上波だけじゃなくて、学生の皆さんも今後は色々インターネットと融合して行くんだろうなーとか考えたりしてると思います。どんどん時代に応じてやり方も変えていかなければいけない中で、お二人は演出の仕事ですが、2人の番組企画はテイストが違うでしょ?

高橋
確かに全然違いますよね。水野さんは、ダウンタウンの浜田さんや林先生と向き合われて・・・

「プレバト!!」はどうやって生まれた?

西田
企画の考え方は各々違うと思うんだけど、どうやって企画を立ち上げているんでしょうか。

水野
僕はいつもその放送枠がどのぐらいの視聴者に見てもらえるか考えますね。 「プレバト!!」でいうと、立ち上げた7年前、ダウンタウンの浜田さんで木曜の夜7時で番組やることが先に決まっていて、なんか考えろって言われました。浜田さんは面白い方ですよね、一方で主婦向けの番組なんてやったことがない人です。どうやったら見てもらえるかなと考えて、他の人がやってないこと、それまでどこもやってなかったと思われる「浜田さん×知的バラエティ」を考えて、そこから試行錯誤していった結果が、あの俳句を中心とする才能査定ランキングになります。

西田
これは浜田さんっていう人に対して、「なかったもの」を掛け合わせたってことですね。

水野
そうですね。特に裏番組が「VS嵐」、それから当時は「黄金伝説」、「マジカル頭脳パワー」が復活するっていう状況での番組立ち上げでした。

西田
バラエティの銀座みたいなひしめき合ってる放送枠ですよね。

水野
ビカビカですよね。だから僕らもよくありがちな、なんかグルメで美味しいものを撮って、放送したら数字があるみたいな、そんな事を思いがちで、夕方のニュースの特集みたいな番組って作りがちなんですけど、どうせみんなビカビカなので普通にやっても失敗すると思って、他の局がやっていないことをやろうと思いました。

西田
結局、どこかにあるものじゃなくて、どこにもないものをどうやって浜田さんで考えるかっていうことで出てきたのが「プレバト!!」だっていうことですね。

水野
そうですね。

西田
そこで出てきたのが、最初は書き順、俳句、そして水彩画になっているんですね。「初耳学」もそういったことですか?

水野
「初耳学」は日曜夜10時という大学生の皆さんでも見てもらいやすい時間なんですが、9時からの日曜劇場のドラマを見終わった後って、皆さんテレビをオフにしたがるんですよね。日曜日は翌日から会社・学校がある人達が多いので、この人たちに1分でも長く見てもらうにはどうしたらいいかなと思い、10時1分、10時2分っていうところで一個ずつ見たいものをずっとなんとかいっぱい流して、結果的に10時54分まで見てもらえたらいいなっていう。

西田
もう1分ずつの勝負なんだ!

水野
勝負なんですよ。裏番組と戦ってるというより、テレビをオフにする人と戦い続けている。

西田
今や裏番組にチャンネルを変えられてしまうということより、テレビを切ってしまうわけだ。違うところに行かせないように、ずっと興味が続くようなことということで初耳学なんですね。

水野
翌日に、学校とか会社でその話を知らないと置いてかれるっていうようなネタをなるべく並べないといけない。

西田
明日の話題になるような。それで林先生だったと。

水野
この時間には2008年まで「世界ウルルン滞在記」という俳優さんなどが世界で何日間かホームステイする番組を放送していました。10時46分ぐらいに「別れの朝」っていう下條アトムさんのナレーションが入って、そこから涙になるのが定番だったんですが、今の世の中の人たちはもう10時46分まで涙を待ってくれる人たちじゃない。「そんなに長いところまでのストーリー待てないよ。早く結論言えよ」という人たちが多いですからね。多分一週間で一番オチまで待てない人が多い時間帯だと思います。なので、とにかく早く結論、結論、結論としたのが「初耳学」ですね。

自分がやりたいと思ったことを企画に落としこんだ「家、ついて行ってイイですか?」

西田
高橋さんの「家、ついて行ってイイですか?」は、テレビ東京の「タレントさんに頼らない」というか「企画で行きますよ」みたいな番組の中のひとつですよね。そのテレビ東京の独自性に結構シンパシー感じる、「テレ東だけは違う」みたいに言う人が皆さんの中にも多いと思います。こういった企画を成立させるっていうのは・・・

高橋
就活でどう仕事選ぶかに通じると思うんですけど、僕が企画を立てるときは、自分のやりたいことをやるっていうのを決めています。製品や仕事の成果って、超絶情熱を注いで自分が熱量を注ぎ込んだものが、結局良いものになると思っています。 あとは自分の人生の有限の時間を使う中で、嫌なことやるのは面倒くさいというのが本当にあって、そのままではいけないんだけど、入り口はそう考えてます。「家、ついて行ってイイですか?」という番組も、街で綺麗な人を見かけたら、付いて行かないけど、付いていきたいと思うような根っこがあったんですよね。他にも電車で凄いブチ切れてるサラリーマンがいて、「こいつ家でどんな顔してんだ。見てみたいな」って思って、そういう自分がやりたいと思った事をなるべく企画に落とし込む。そのまま出すと趣味になっちゃうんだけど、水野さんが言っていたようなマーケット上で、裏番組や市場で、どんなものが求められているのか、どういったニーズがあるのかと合わせながら企画にしていってます。

西田
そういった企画を「家、ついて行ってイイですか?」だけじゃなく、いっぱいやられてますよね。「吉木りさに怒られたい」なんか単純に高橋さんが怒られたかった感じですか?

高橋
そうですね。吉木りささんにずっと画面越しに怒られる番組なんですけど、僕が怒られたかっただけですね。

西田
あと2015年には「カメラ置いとくんで、一言どうぞ 〜街中に、カメラ放置してみました〜」なんて番組も作ってましたね。

高橋
これはNHKの「ダーウィンが来た!」で、定点カメラを仕掛けておいてタヌキが覗きに来た映像がすごく可愛かったんですよ。それを見ていて「人間もカメラ置いておいて覗きこんだら可愛いのかな」と思ってやったという、面白いなと思ったことをやりたいっていう企画ですね。

西田
やっぱりこう自分が考えているものを形にしてきたんですね。苦労はありますか?

水野
苦労はします。だけどテレビ局に入ってみて思ったんですけど、結構普通な人達がテレビを作ってると思いませんか?

結構「普通な人」が作っているテレビ

西田
番組の制作者?

水野
はい、というのは、ものすごい天才がひらめいてバンバン新しい企画を考えてるって思ってたんですよ。だけど実際は凄く普通の人達で、僕自身も別に人と違うことをバンバン思いつくタイプだとも思ってはいないんです。 じゃあ番組を作る上でどういうことを考えるかっていうと、多分誰よりも外を歩いていろんなところでインプットする。映画だろうが本だろうが、いろんな場所へ行く、いろんな人と喋る、それからいっぱいテレビを見る。結局その情報量の多い人間が、最終的に情報の中のどこを抽出し的確にするかっていう部分の勝負をしているだけだと思うので。実は特別な才能とかじゃなく、ただ努力というか知ってることの合計の数が多い人間勝つんだと。

西田
才能ではなく戦える環境がテレビにはあるということ?

水野
絶対そうかなと思います。新人研修とかでも話すんですけど、勝った人間は負けた人間に対して、どのぐらい余裕で勝ったか分かるんです。例えば自分が10の情報を持っていて、相手が2しかないと余裕勝ちですよね。その時に「俺は余裕で勝ったな」と情報量に関して全然違うレベルで勝ったことが分かるんですけど、2の人間は、自分が10の人間に対してどのくらいの差で負けたか分からない。「俺ギリギリで負けたなー」と思っている人がいるんですけど、「ごめんその考えの後、俺はココとココとココとココとココのプロセスを経て、この結論で俺は勝っているから」っていうのが結構残酷。その情報量、勉強量の差っていうのが、いろんなところで出ると思います。だからこそ、その努力は大事だし、一回10対2で負けちゃうと、そのあとずーっとマウントを取られるという残酷なところもありますよね。

西田
高橋さんは、逆に才能よりも想いが情報に代わるモノになると思われていますか?

高橋
努力というのは本当に僕もそうだと思います。テレビは漫然と流れてるけど、水野さんもすごい時間を費やして番組のこと考えているし、僕の「家、ついて行ってイイですか?」は毎週1時間OAするんですが、その1時間番組の中のワンカットって、7秒ぐらいのカットを6秒と4/5秒にするか、7秒と1/5秒にするかといった部分で笑いが来るか来ないか変わります。そういうのをひとつずつ調整したり、そういうスキルをひたすら磨いていく努力が大事だなと思います。
それにプラスアルファして言うと、興味を持ち続けることだと思います。視聴者のみなさんに面白いと思ってもらわなきゃいけないとなると、自分がまず面白いと思わないといけない。なので、どうやって好奇心を保ち続けるかっていうのが大事だと思います。そのために、僕は人と会話してる時もなるべく街を観察して、じーっと観察して変なことないかなと思っています。

西田
2人はテレビから世の中をちょっと揺さぶっているような感覚ってありますか。

水野
普段はあまり感じないんですけど、時々番組の感想を直で聞けることがあるんですよね。イベントを開いた時とか、林先生とご飯を食べてる時に番組の感想を急に言われたりする時とか。そんな時に「あの時のあの言葉がすごく自分の中で頑張れるきっかけになってます」とか思いのほか言ってもらえて、結構世の中の色々な人に影響を与えてんだなーって思った時は、視聴率とは違う意味で嬉しかったですね。

西田
図らずも自分の番組から何か人々の心に刺さるものを提供していたことが、後になって感じるんですね。高橋君もそうですか?

高橋
僕もそうですね。特に就活生に会って「この番組を見てテレビ作ろうと思いました」と言われた時に感じます。僕もテレビに影響されてテレビ局を受けたので、就活の時にそういうことを心から言ってもらえた時はうれしいですね。あとは取材対象者の人。テレビカメラが行くと、取材対象者の人生が良い方向に変わったりすることがあって、そうした瞬間はとってもいいな、やってて良かったなーって感じます。

西田
自分が思ってることを電波を通じて届けることで、人との触れ合いになっている、更にそれが自分に返ってくるのがテレビの仕事の大きな魅力なのかもしれません。

水野さん高橋さんが考える「就活面接」

西田
今日はテレビ局・ラジオ局を受験しようかなと思ってる皆さんが多いと思うんです。面接ってあるわけじゃないですか、一番最初が肝心ですよね。

高橋
空気で分かりますよね。

西田
それは何ですかね。何か用意しとかないといけないとか、どう向き合っていったらいいですかね?面接官や会社に対して。

高橋
そうですね。2つぐらいあるのかな。 ひとつはやっぱり取って付けの勉強でもいいんだけど、テレビ好きっていう感じは出してくれたほうがいい。テレビ局を受けてるのに「テレビ見てません」と言われちゃうと辛くて。僕は大学5年行ったんですけど、5年間でテレビ見てたかって言われると、普通の人ぐらいだったんですよ。でも普通の人のレベルぐらいでいいと思うんです。超テレビ好きじゃなきゃ受からないというわけではないんだけど、漫然と見てるだけなくて、少なくとも就活するこの数ヶ月は、本当に分析する目でテレビをいっぱい見た方がいいと思います。生まれつき超絶テレビが好きじゃなくても、その数ヶ月ぐらいはやったほうがいいかな。
あともう一点は、就職して仕事として、テレビを何でしたいのかって思う思いは突き詰めて、それに対する思いは情熱としてビンビンくる人の方がいいですね。僕らも最低限に勉強していてくれれば、超絶テレビオタクである必要はないと思っています。最低限の勉強が必要と思っているけど、その先にテレビで伝えたいことがあるとか、こういう風に人を笑わせたいとか、こういう問題意識を伝えたいとかは強く持ってて欲しいですし、それに対するロジック、テレビ・ラジオというツールでやりたい、だからこの局でやりたい、そのロジックを持って臨んでほしい。

西田
水野くんはどうですか?

水野
面接って、特に一次面接は1日ずっと40~50人の話を聞くんです。全部終わった後に10人とか5人とか通す人を決めるんですよ。1人ずつ「通します」「さよならです」ではなくて、1日終わった後に、最終的にあの子どうだったっけなーってなるんですよね。その時に覚えて貰ってるかどうかってとても大きいと思うんです。
これは気をてらうことではないです。何が大事かって言うと、自分の言いたい事と、相手に伝えたらすごくアピールになる事を突き詰めると、微妙にずれることがあります。自分はサークルのことが喋りたいけど、実は相手に刺さるのはもっと違うことじゃないかと。これって、テレビを作る時に自分の作りたいものはコレなんだけど、視聴者が見たいのはこれかもしれないって考えるところと実は同じところを試されていると思うんです。そうすると、面接ではどこから入ってどういう風に話を持っていけば面接官が1番楽しむだろうかっていうのは、ゆくゆく自分がどこの部署行っても、結局相手を惹きつけられるかだと思うので、自分はこのぐらい出来ますよって見せつける場所って考えたら楽しくなりますよね。

西田
面接を逆に自分を表現する場と思おうということですね。
多分これテレビ・ラジオの仕事だけじゃなくて、これからの時代って自分をプレゼンテーションできなきゃいけないですからね。それがわかりやすいのがテレビ局で、普通にお仕事するだけじゃない、クリエイターの部分もあるからかもしれませんね。

水野
すごいとっておきのピカピカなエピソードが必要かって言うと、別に「野球で日本一とりました」っていう人が通るわけではなく、「三塁コーチャーとして、僕こんな局面やりました」って熱く喋った人の方が、終わった後に「あの三塁コーチャーの子面白かったよね」って話題に挙がることは面接していてリアルであるわけです。

西田
型通りの「大体こういうところから話がスタートしたら、こう終わるやろな」って、めっちゃ綺麗に話がまとまってるときがある。出だしと終わりがわかるやつ。それは綺麗に出来てるんだけど全く心が震えない。
就活生の皆さんもエピソードを作っておかないといけないと考えていると思うけど、当たり前のことを一生懸命喋られてもしんどいよね。お二人もやっぱり当たり前じゃないってこと、すごい考えてますよね?

「好きな番組」「嫌いな番組」

水野
あともう一つ、「好きな番組なんですか?」って聞いた時に「水曜日のダウンタウン」て答える人や、今年は多分いない思うけど「クレイジージャーニー」て答える人めちゃくちゃ多いですよ。逆に嫌いな番組で「行列のできる法律相談所」と答える人もめちゃくちゃ多いんですよ。
それがすごいテレビのこと分かってる風で来るんですけど、本当に聞き飽きました。「水曜日のダウンタウンを面白いと思ってる俺、尖ってるでしょ」って思っている人は結局いっぱいいる。ひっくるめて、またこの話かよって面接官は思ってます。「水曜日のダウンタウン」という番組自体はすごい尖ってるし、総合演出の藤井くん(TBSテレビ制作局・藤井健太郎さん)の凄い個性が出てる番組ですが、それを面白いって言うことは、もう実はありきたりな意見を言ってる可能性が高いってところ、1回客観的に考えたほうがいい。
あと「行列」は、毎年だいたい言われる理由が「法律番組なのに違うことばっかりやってるから」です。でも結果としてものすごく多くの人が見ているわけで、それを分かった上でやってるわけです。むしろこの番組を面白いと言ってる人の方が「なんで」って引っかかります。そこに対していい答えが返ってきたら、よく考えてんなーということになるかなと。

西田
常にみんながどう考えてるかを意識して、みんなじゃないところを取りに行ってるよね。

水野
そうですね。結局はそこになりますよ。

西田
高橋くんもそうですか?

高橋
そうですね。確かに「水曜日のダウンタウン」面白いし、めっちゃ好きですよね。好きなのは本当なんだけど・・・

西田
これだけのお二人でも、好きな番組って言ったら「水曜日のダウンタウン」と言っちゃうわけですね。

高橋
まあ確かに好きなら偽る必要もないけど、好きって言うなら独自の目線を入れた方がいいと思います。面白いから好きだとかじゃなく、自分なりに考えた答えを言ってくればいいかなと思いますし、「水曜日のダウンタウン」を好きにとどまらず、そこからテレビを好きになって、その奥にある「行列」とかの良さまで説明できると、かなりテレビのことを研究してるなって目線に繋がるのは確かですね。
テレビの一番いいところは、やっぱりマスだと思います。例えば椎名林檎を若者じゃない僕は知ってても、あるいは米津玄師を皆さん世代は知ってても、おばあちゃんが知ってるかいうと微妙かもしれない。テレビ番組は、九十歳の農村のおじいちゃんから若い人まで皆知ってる人が出て、みんな楽しめているのが良さだと思うのですが、「行列」ってそこをうまく体現している番組だと思います。若者に深く刺さるかというと刺さらないけど、みんなに見てもらうための「行列」の工夫ってなんなのかって考えられている人はすごいなと思います。

水野
「行列」のキャスティング力やキャスティングの速さ、目線は全テレビ番組の中でもトップクラスなんですよね。実はあの番組は、テレビを作っている人間みんなが注目してる番組なんです。そのぐらいトークの組み込まれ方、VTRの挿し方も含めて仕組まれている。

西田
実は目立たないところにいろんなものが仕組まれているっていう、これは良いヒントをもらいましたね。他の学生が「行列が」っていうたら「なんや」って思うところ、実は私は違いますって言ったら・・・。

高橋
みんな「行列」って言い始めちゃうんじゃないですか。

西田
いいんじゃない。それもまだ1回ぐらい大丈夫かもしれません。
みんながどういう行動するんだろうか、ということの裏をかくわけではないけど、やっぱり自分のオリジナリティをどう表現するのかも面接では大切になってきますよね。

水野
エントリーシートに書く「好きな番組」とかは、面接官はネタ振りだと思って見てるわけですよね。だからちょっと変わったこと書いてあってネタ振りだと思って聞いたのに、返事が無かったりすると「なんじゃそれっ」てなるから、ただ好きなだけで書かないほうがいい。結局はアピールするための場所なので、リアルに「水曜日のダウンタウン」と書くのか、その後の自己PRに持っていける番組を書くのかは大きな差だと思います。

西田
個性を伝える戦略だと思います。 僕も読売テレビの人間なのですが、関西テレビも受けました。その時も好きな番組書けっていうのがあって、当時は「ねるとん紅鯨団」が関西テレビの看板。だからみんなそれ言うと思ったので、2分間の大阪市の情報番組「マイ大阪」というのを書きました。確実に「ウチ『ねるとん』やろ」と思ってるのに好きな番組「マイ大阪」だから「なんで?」って聞かれて、「いやあんなに大阪市に愛がある番組できるなんて。僕は小さい時から見ていた」と話したら面接官ゲラゲラ笑って、やっぱ「また来てね」ってなりました。そういったことを作為的にやるのはどうかというのはあるけど、僕は本当にその大阪市の番組が大好きだったんです。地味な橋本アナウンサーがずっと地味に喋ってんのよ。「あの地味なのがたまりません」って話したら盛り上がりました。
あともうひとつ、テレビには演出・プロデュースという形で番組を背負って先頭に立つ人もいるけど、もちろん一緒になってチームとしてやっていくメンバーもいます。だから決して先頭に立つ人間にならなければいけないわけではないので、チームとして支えていきたいという感覚もすごく大切だと思います。だから「私は先頭に行きます」ではなく、「私はチームの中で果たすべき役割があります」と告げることも面接でアピールになるかな。

水野さん・高橋さんが語る、これからのテレビ・ラジオの魅力

西田
これからのテレビ・ラジオの魅力っていうか「絶対アリやで」とかあれば、ちょっとみんなに話していただきたいと思います。

水野
地上波だけじゃなく動画の配信ができる時代なので、当然僕らも他の業界の人たちと話す機会がここ5年ぐらいで格段に増えました。で、その時に僕らが感じるのは、やっぱりコンテンツを作れることが、ものすごく強みになっているということ。他の人たちよりも確実に作れる地肩を作らせてもらっている。これはやっぱり地上波でしかできないし、これがこの先の時代でも交渉の時の強みになるんですよね。
最近SNS界隈のインフルエンサーとお仕事をすることが多かったんですけど、SNSでのバズりっていうのが実は視聴率には全く関係ない。登壇している3人全員感じていると思うんですけど、Twitterでバズっても視聴率が0.1%も上がってない感覚があります。ちょっと番組の公式SNSとかでバズりそうな言葉を言うと、実はインフルエンサーたちの何倍もバズらせることが出来る。でもそれは我々の指標である視聴率に全然関係なかったりする。と考えた時に、何が今後一番伸びていくのかもわからないけれども、やっぱり地上波でコンテンツ制作スキルをしっかり培っていくことは、僕は間違った方法ではないと思います。
そのためにはとても恵まれている業界だと思うし、いろんな人にも会えるし、いろんな先輩たちもいるし、いいことも悪いことも含めてすごく学んで行ける場所だと思うので、第一歩としてはとても良い選択肢だと思います。

高橋
テレビって、めっちゃ面白い、本当に。端的に言って、就職して損はないかなって思っています。なぜなら楽しいことを考えるのが仕事だから。もちろん真面目なマーケティング分析などもあるけども、楽しいことを常に考えているから人生飽きないなって思いす。
あと、普通に生活してたら体験できないことができたり、色々行けない所に行くことも出来る。僕も「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ」という番組をやっていた時に、最近国名変わっちゃったんだけど、地球に今1か国だけ絶対王政をひいてるスワジランドという国があって。絶対君主ってどんな人か見てみたいなと思って「絶対君主であるスワジランドの王様と写メを撮りたい」っていう企画で、ガチで何の約束もしないで本当に行ったら、写メを撮らせてくれた。絶対王政の君主に突撃して会いに行くとか、普通には経験できない。身近なところでも、上野動物園のゾウの真ん前に厳重に鍵がかかってて入れない一角があります。あの森に囲まれた40畳ぐらいの広さのスペースが何なのかと思って開けてもらうと、藤堂高虎さんという戦国武将のお墓がありました。そういうものを特別に見せてもらったりとか、身近であろうが世界の果てであろうが普段人が見れないところに突入して行って、その味わった楽しさを他の皆さんに伝えることが職業というのは、やっていて本当に楽しい。その楽しさが仕事をしていく上では一番大事だと思う。
あえて苦行にいく必要はないから、好きなことを仕事にしたほうがいいと思います。好きなことをした上で金がもらえるというはとても良いと思う。あとは時代が変わってきて、コンテンツの出し口もネットとか海外にも広がってるし、自分の企画が通りやすい環境にもなってきて、どんどん作り手が足りない雰囲気もある。コンテンツを作る人が足りない感じ。

西田
もっともっとみんな集まってきてほしいなって思いますね。
テレビっていうのは受像機自体もう皆さんが電源つけたら見れるって環境が整っている。テレビは実は結構見ちゃっているんです。視聴率ってことだけじゃなくて、意欲的な表現をした時に世の中が動いちゃう可能性が、他の表現手法よりも強いと思います。それでも「なんかそんなこと言ったって、おもしろくない番組ばっかりやってるじゃないですか」と言うかもしれませんけど、おもしろいものに変えていく用意が、テレビ局にはまだまだあるんです。皆さんの強い想いを待っています。
その想いを年次は違うけども果たしてきたのが、このお二人なんです。だから「私たち僕たちがいるから安心してください」とお二人に続いてほしい。君たちの時代で君たちのテレビ、君たちのラジオを作ってやるんだという気持ちを強く持つことが大切なのかなと思います。もともとそういった形でテレビ局に入ったんですよね?なんか「やったろう」と言うか・・・

高橋
そうですね。

西田
これから皆さんテレビ局とかメディアだけじゃなくて、色んな会社に就職活動して行くと思いますけど、自分がどう今まで生きてきたかっていうのと、どうやってこれから生きていくのかっていうことの、ひとつの大きな何か答えが出てくる本当に大切な時期だと思うので、決して不安だけで突っ走るんじゃなくて自信を持って自分を信じて行ってもらえたらと思います。

本日はどうもありがとうございました。ほんまにほんまに頑張って!