日本テレビ放送網
~見えないストレスを見える化する~
デジタルミラー「ミロモ」

今回、放送局が関わる最新テクノロジーをご紹介いただくのは・・・
日本テレビ放送網株式会社 社長室R&Dラボ 久野 崇文(くの・たかふみ)さん

環境情報学部環境情報学科卒業
2010年日本テレビ放送網入社。制作技術部門に配属後、VE(ビデオエンジニア)およびTD(テクニカルディレクター)として、スタジオ番組に加え、箱根駅伝などの移動中継車や、五輪やW杯の現地業務などを担当。その後、技術開発部に異動し、ウェブ技術の放送活用に関する研究開発を行う。現在所属するR&Dラボでは、新しいテクノロジーやサービスに幅広く着目し、異なる強みを持つ他企業や大学との共創案件の立案・実施を行っている。

久野 崇文

久野 崇文さん

はじめまして!今回は “見えない”ストレスを可視化するスマートミラー「ミロモ」をご紹介します。
放送局が鏡の制作に関わっているのは意外ですよね。
でも、この鏡には放送局ならではのアイデアやコンテンツ制作力が注ぎ込まれているんです。

2021.12.9 thu

「ミロモ」とは?

日々の暮らしの中で気付かない間に蓄積している「ストレス」を可視化し、その解消を促してくれるスマートミラーのプロトタイプです。日本テレビのR&Dラボと、大手電機メーカーの未来志向デザインスタジオのコラボレーションチームにより生まれました。 まずは動画をご覧ください。

ミラーに仕込んだカメラで、ストレスレベルを測定し、モンスターとして可視化。そのモンスターを、エクササイズをイメージした動きで倒していくことで、楽しくストレスを解消します。笑顔も検知できますので、笑いながらでないと倒せないというギミックもいれて、最後にはどの体験者も笑っているようなプログラムになっています。

どのようにして生まれた?

我々の「アイデア発想力やコンテンツ技術力」と、電機メーカーの持つ「テクノロジー、商品開発力、デザイン力」など、業種を超えてお互いのリソースを持ち合い、「社会課題の解決につながる、暮らしやエンターテインメントのビジネスアイデア」というテーマで共創活動を開始したのがきっかけです。 そこで生まれたアイデアのプロトタイプ第一弾として、コロナ禍でのくらしの課題である「ストレスの悪循環」(解消手段が無いまま、気が付かないうちに心身にストレスがたまり続けてしまうこと)の解消を目的としたスマートミラーを制作しました。

アイデアブレストや実験の様子

アイデアブレストや実験の様子

ご存知のとおり、画像認識技術は急速に進歩しています。単なる顔の映像から、その表情や脈拍など様々な情報を読み取ることができ、それをAIで処理することにより、ストレス具合から、細かな感情の起伏まで捉えることができます。ミロモは、このようなテクノロジーと、エンタメ・ヘルスケアのアイデアを掛け算することにより生まれました。

共創の面白さ

ミロモのグラフィックは、番組のCG技術メンバーが担当し、キャラクターボイスはアナウンサーが担当しました。私もカメラや映像・音声技術については知識がありましたので、それを活かしたアイデア出しやプロトタイプ、あるいは音声データの編集などを行いました。

テレビ局で培われた能力を、普段と違う分野で活かせるのは面白いですし、我々の持つ価値の再発見にもなります。
そして当然ですが、我々と他の企業とでは、考え方や、言語化の方法などのカルチャーも大きく異なりますので、アイデアの具体化には苦労しました。しかし、そのプロセス自体から多くの学びがあり、新たな視点が得られました。
イノベーションは、異分野の掛け算から生まれるものですので、まさにそれを期待して共創活動を行っています。

また、そこで気になるのが我々の強み、という部分。先に述べたようなコンテンツ制作力は勿論ですが、例えばコンテンツ×テクノロジーといった分野に関しては、日本テレビは以前から様々なトライアルをしてきました。最近話題のメタバース関連では、なんと2007年、実に14年も前に、仮想空間における番組収録や配信をしておりました。この時は、まだ日本ではiPhoneすら発売されていない時代。これは少し早すぎたのですが、時代に縛られず生み出されるアイデアやチャレンジ精神も、我々の持つ強みのひとつであると考えます。

R&Dラボの活動について

我々がいま、主に提供しているのは二次元の映像と音声によるコンテンツです。しかし、これからIoT家電や触覚や嗅覚などの多感覚再現技術、あるいはXRやメタバースという領域が普及してくると、より豊かなメディア体験が求められるでしょう。つまり、コンテンツ×新しいテクノロジーやデバイスで、新しいものを生み出していかなければなりません。技術の進歩は加速しており、今、「こんなのは無理だ」と思われるものでも、10年後には普及している可能性もあります。

また、コンテンツ目線では、生活者の求めるメディア体験も変化しており、テレビ局は放送局から、放送“も”やっている企業への変化が必要です。
我々の部署では、中長期目線で、そういった変化に対応すべく新たなテクノロジーやサービスの種をリサーチし、プロトタイプを通して、生活者に新しい価値を問いつつ、社内に新しい視点や知見を還元しています。

私の所属するR&Dラボでは、ミロモに限らず、領域横断的に様々な調査・研究・開発活動を行っています。こちらのnoteにて紹介しておりますので、ぜひご覧ください!
「R&Dラボのnoteはこちら」

<「MINPO.WORK」中の人からのQ&A>

今回「ミロモ」をご紹介いただいた久野さんに、みなさんに代わって「MINPO.WORK」中の人が気になることを聞いてみました!

MINPO.WORK

MINPO.WORK

Q1 学生時代はどのようなことに取り組まれていましたか?

久野 崇文

久野 崇文さん

インタラクティブメディア(※)の研究をしていました。また、サークルは教室やホールにある映像・音響機器をオペレーションする団体で、夜な夜な爆音で映画を流したりして遊んでいました。入学当初は放送局に興味があったわけではないですが、結果的に今と近いことをやっていましたね。

※インタラクティブメディア:発信者と受信者が相互に情報のやりとりをするメディアのこと。SNSや動画共有サイトなどがあてはまる。

MINPO.WORK

MINPO.WORK

Q2 放送局を志望したきっかけはなんですか?

久野 崇文

久野 崇文さん

就活イベントで放送局内を見せてもらい、単純にカメラマンや中継車がかっこいいなと思ったのと、当時もウェブメディアは出てきたとはいえ、創ったコンテンツが一度に数千万人に届くメディアというのは他になく、その最前線で働いてみたいと感じたことです。

MINPO.WORK

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Q3 学生のみなさんにメッセージをお願いします!

久野 崇文

久野 崇文さん

放送局では、みなさんが思っているよりもかなり幅広い仕事ができます。つまり、皆さんの持つ研究テーマや個性を生かせる場面が多いということです。
私もザ・テレビの現場にいた一方で、今は学生時代に身に着けたスキルや興味を活かし、大学との新技術研究や、ファッションといった全く毛色の違う領域に取り組んでいます。W杯や五輪といった一生に一度レベルの刺激的な現場から、次世代のメディア開発まで幅広く経験できる会社。おもしろそうだと思いませんか?

MINPO.WORK

MINPO.WORK

ご回答いただき、ありがとうございました!