日本テレビ放送網
小さな“気づき”を大きな“変化”に!
“自作AI「エイディ」” “自由視点映像によるスポーツ中継”など次々と実現!!

小さな“気づき”を大きな“変化”に!“自作AI「エイディ」”

今回、放送局が関わる最新テクノロジーをご紹介いただくのは・・・
日本テレビ放送網株式会社 技術統括局 篠田 貴之(しのだ・たかゆき)さん

大学院(電気・電子工学専攻)卒業。2008年日本テレビ放送網入社。五輪の国際信号制作や、箱根駅伝移動車業務など、番組制作の技術担当として幅広く関わりながら、現場の立場から新技術の提案・プログラム開発・導入を行う。自ら起案した取り組みで、日本民間放送連盟賞 技術部門を4回(うち最優秀2回)受賞。その他にも経済産業大臣賞(日本映画テレビ技術大賞)を3回受賞、映像情報メディア学会 技術振興賞6年連続受賞など30近い賞を獲得。現在、業務の傍ら会社の修学サポート制度を利用して、米国大学院に在籍中。

篠田貴之

篠田貴之さん

番組制作の現場にいると「こんなことがやりたい!!」、「こんなものがあれば便利なのに」という“気づき”がたくさん生まれてきます。これまでに形にした多くのアイデアのうち、昨年の民放連賞 技術部門 最優秀、経済産業大臣賞など多くの賞に入選した“AI業務支援システム「エイディ」”と、今年同等に多数の入選を果たした“プロ野球中継の自由視点映像”に焦点を当てて、ご紹介します!

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2023.11.21 tue

AI業務支援システム「エイディ」とは?

最初は「番組制作を効率化するうえで、AIでどんな貢献が出来るか」を想像しながら、ひとりでプログラム作成をはじめました。気が付けば一緒に開発・導入に参加する仲間は50人を超え、技術・制作・アナウンサー・グループ会社とバラエティに富んだメンバー構成となりました。

AI業務支援システム「エイディ」とは?

例えば、スポーツ番組では今年話題となった「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」、「ラグビーワールドカップ2023フランス」の全試合を含む様々な日本テレビの生中継で、「スコアデータの自動入力」や「音声解析による盛り上がりの数値化」などが導入され、報道や情報番組では映像解析結果を用いた番組演出も多数取り入れられました。「エイディ」の用途は広く、番組の監視、顔認識による番組制作支援なども可能となり、番組の品質向上のみならず、効率化とスタッフの働き方改革にもつながっています。

プレスリリース|企業・IR情報|日本テレビ (ntv.co.jp)

自由視点映像を用いたスポーツ中継とは?

ボリュメトリックビデオ技術は複数のカメラから3Dモデルを生成する技術です。開始からちょうど70年の野球中継にこの技術を使えば画期的な取り組みができるのではないか?そして長い目で見て、周囲のテクノロジーが発展すると非常に価値が高まる技術だと感じ、すぐにスポーツ担当者や関係する人達に想いを伝え、実現に向けて動き出しました。

自由視点映像を用いたスポーツ中継とは?

2023年東京ドーム開催のプロ野球公式戦等68試合で自由視点映像を用いた世界初の野球中継を実現。まるでグラウンド内に入り込んだかのような選手目線など、これまでにない映像を生成し放送・配信しました。単なるエンターテインメントではなく、新しい視点からスポーツを楽しむ新文化の創出を目指して取り組んでいます。

プレスリリース|企業・IR情報|日本テレビ (ntv.co.jp)

アイデアはどうやって生み出す?どうしたら実現できる?

様々な開発を進めるうえで、「現場」を大事にすることを常に意識しています。よくあるのが、「気になる技術があるから」といって技術先行で開発してしまうと、実はその取り組みは現場ではニーズがなかったということが起こりがちです。
そうではなく、なるべく現場に近い立場に自分を置いて、「自分自身も番組をつくっている」、「自分もクリエイターである」という意識を持ちながら開発すると、自然と「考えること」に対して前のめりになり、制作と深くコミュニケーションをとることで、現場に「必要なもの」、「必要でないもの」が見えてきます。

テレビ局でモノづくりをする意味とは?

考えたアイデアを形にする仕事は面白いです。昔の話になりますが、私は高校生の頃、芸術系の学部を志望していました。しかしこれからの芸術はテクノロジーとの境目は無くなっていくと考え、理系を選びました。今本当にそのような時代になってきていると思います。大学・大学院でテクノロジーの素養を身に着けた後、なぜテレビ局を選んだか? モノをつくる人の多くは、自分の作品を多くの人に見てもらいたいと考えていると思います。テレビ局でアイデアを形にすると、コンテンツ制作の中心地で、一流の制作者たちと刺激し合い、作品をつくることができます。さらにテレビ局は、その作品を流通させる部分まで所有しているので、放送や配信を通じて多くの人たちに見てもらえる機会が増えるというところにまでつながります。実はモノづくりをするうえでテレビ局はとても魅力的な選択であるということを実感しています。
例えば「自由視点のスポーツ中継」などは、多くのメディアで取り上げられ、「2023年の最新トレンド10件」に選出してくれた誌もありました。エイディも自由視点も海外や他社から問い合わせもあり、ビジネス展開を進めるうえでもテレビ局は積極的にサポートしてくれる時代になっています。

<「MINPO.WORK」中の人からのQ&A>

新たな取り組みに次々とチャレンジする篠田さんに、みなさんに代わって「MINPO.WORK」中の人が気になることを聞いてみました!

MINPO.WORK

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Q1 学生時代はどのようなことに取り組まれていましたか?

篠田貴之

篠田貴之さん

大学院では、画像処理やAIを扱う研究室にいました。空き時間は幼少期から取り組むサッカー(東京都準優勝)や音楽活動(iTunesで最高日本8位)など。アルバイトでは、CG制作、映像編集と、家電量販店では記録的なデジカメ販売数で表彰され、就職活動時の自己PRにしていました。さらに語学習得の為に海外のレストランでアルバイトをしながら、日本の大学の課題提出を行うなど、いろいろと手を出しすぎたかもしれません。

MINPO.WORK

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Q2 テレビ局で働くために、学生時代に何をしたらよいですか?

篠田貴之

篠田貴之さん

様々なことを経験して広がりを持たせておくことが重要だと思います。私の例で言えば、「画像処理やAI」は今の開発の軸ですし、「スポーツ経験」が長いことからスポーツ担当者と同じ思考回路であることが多く、担当の多くはスポーツ関連です。「音楽経験」は、しばらく現場の音声担当をしてきた際や音の研究に役立ちました。「人にものを売る」という経験は、新技術の魅力を番組に売り込む際や、プレゼンを通じた様々な受賞にもつながっています。「海外経験」が多いので、魅力的な国際映像制作に携われています。
意外とテレビに関する技術に関しては、その一流の人たちが職場にいるので、入社後でも学べます。それよりも、むしろテレビとは一見関係のない経験こそが強みになりやすく、テレビやボーダーを超えた取り組みに繋がります。今皆さんがやっていることを一生懸命やる。それが大事だと思います。

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Q3 最後に学生のみなさんにメッセージをお願いします!

篠田貴之

篠田貴之さん

私も今、働きながら米国大学院の学生をしています。テレビ局は常に時代についていくことで価値を生み出す業界なので、私も皆さんと同じように学び続けることが重要だと思っています。日本テレビは仕事との両立ができる環境も整えてくれています。様々なInputを行う機会を与えてくれ、生まれたアイデアのOutputまでみんなでケアしてくれる業界です。皆さん、一緒に大きな変化を生み出していきましょう!

MINPO.WORK

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ご回答いただき、ありがとうございました!

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