民放の最新テクノロジー

テレビ朝日
カメラ映像の切り替えを自動化する「自動スイッチングシステム」

カメラ映像の切り替えを自動化する「自動スイッチングシステム」

今回、放送局が関わる最新テクノロジーをご紹介いただくのは・・・
株式会社テレビ朝日 技術局 技術運用センター 森山顕矩(もりやま・あきのり)さん

大学院理工学研究科卒。2013年テレビ朝日入社。報道技術・VE(ビデオエンジニア)として現場制作技術を経験したのち、ABEMA NEWSの技術担当となり、制作技術だけでなく配信技術やシステム開発なども担当した。2022年より現部署となり、バラエティー番組や、イベント配信、スポーツ中継などのTM(テクニカルマネージャー)を担当している。また、AIやクラウドを用いた新しい番組制作技術の調査研究も行っている。

森山顕矩

森山顕矩さん

はじめまして!今回はテレビ朝日が開発した「自動スイッチングシステム」をご紹介します。
制作現場の人手不足解消や業務改善を目指して、オペレート技術の自動化を研究しており、その中で、番組制作において欠かせない“スイッチング”の自動化に取り組んでいます。

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2024.03.15 fri

「自動スイッチングシステム」とは?

番組制作現場では番組進行に合わせてカメラ映像を切り替えるスイッチングというオペレートがあり、番組演出にも影響する重要な業務になります。このオペレートを自動化することのできるシステムが「自動スイッチングシステム」です。
 システムのベースとなる仕組みはマイク音声連動です。トークしている人物に適宜スイッチングするようになっています。ただ、それだけでは不自然なので、例えば2人が同時にトークをしたら2人が映っているカメラにスイッチングする等、自然に見える工夫を組み込んでいます。更に、よりプロが操作しているように見せるため、映像解析を行い、笑顔などのテレビ的なリアクションも検知できるようにしています。音声連動に加え、リアクションも検知することでより自然でプロが操作しているようなスイッチングを実現しています。

「自動スイッチングシステム」とは?

自動スイッチングシステムの仕組み

実際に番組でも活用しており、現場の負担軽減などに貢献しています。その分人間は自動化が難しいよりクリエイティブな作業に注力することができ、全体としてコンテンツ価値を向上させることができます。深夜帯に放送していた「ソレいる?六本木会議」では収録現場で活用しつつ、このシステム自体を1つの企画コーナーとしても取り上げていただきました。生放送の報道番組「サンデーステーション」ではワイプ(画面上の小窓)部分のスイッチングで活用しています。

自動スイッチングシステムを用いた番組収録(カメラ6台を自動スイッチング)

自動スイッチングシステムを用いた番組収録
(カメラ6台を自動スイッチング)

開発の経緯

テレビ局では地上波番組に加え、配信番組やウェビナーなどコンテンツ制作の需要が増しており、制作現場の人手不足が課題になっています。そこで、オペレート業務を自動化できないかと考えたのがスタートです。これまで様々な自動化技術を調査研究してきましたが、求めるものがこの世に無ければ「自分たちで作ろう」という思いで取り組みました。
元々開発系の部署にいたわけではないため、プログラミングなど勉強しながらの開発になりましたが、試しては修正、試しては修正を何度も繰り返し、現場で求められる自動化技術とは何かを考えながら開発を行いました。共に研究を行った吉武佑祐さんは元カメラマンでスイッチャー経験豊富な方です。どのタイミングでどのカメラに切り替えたいか等のスイッチャー心理を1つ1つ定量化し、システムに落とし込むことで、自動化されたシステムでありながら、どこか血の通ったようなシステムになりました。

森山顕矩 技術局 技術運用センター

森山顕矩
技術局 技術運用センター

吉武佑祐 技術局 技術運用センター

吉武佑祐
技術局 技術運用センター

チャレンジできる環境

このシステムは、テレビ朝日とサイバーエージェントで協業している動画配信サービスABEMAのニュース専門チャンネルABEMA NEWSにて初めて活用しました。OAしている最中はうまく動くかどうかドキドキでしたが、OAを終えてホッとしたことを覚えています。これまでも番組制作を行うスタッフとして緊張感を味わってきましたが、作ったシステムがOAに使われるというのはまた違った緊張感と達成感があります。この過程や喜びは大学時代の研究に似ている部分があるなと感じました。

自動スイッチングシステムを用いたABEMA NEWSのOA画面

自動スイッチングシステムを用いたABEMA NEWSのOA画面

このようにテレビ局ではチャレンジできる場面が多くあります。自動スイッチングシステムも、必要とされている事を考えつつも、これは面白そうだと思いと開発しました。もちろん、技術者として信頼できるものを作り上げないといけないですが、提案した時に「やってみよう」と言ってもらえる、または言える環境というのはとても貴重だと思います。
番組以外にも、番組イベントや音楽フェスなどのイベント事業から、有明に建設中の複合型エンタテインメント施設「東京ドリームパーク」をはじめとしたメディアシティ戦略など、様々な仕事分野があります。技術者として開発したモノが活用されるチャンスが広くあるという事も他では体験できない事かと思います。

反響とこれから

自動スイッチングシステムは2023年度 日本民間放送連盟賞技術部門 優秀賞受賞するなど、社外からも多くの評価をいただく事ができました。このような機会があるもの、技術者としてとても良い刺激になります。

「ソレいる?六本木会議」OAの一部

「ソレいる?六本木会議」OAの一部

■テレビ朝日プレスリリース:https://company.tv-asahi.co.jp/contents/press/0085/files/T4XgZrnGoy.pdf

また、Inter BEEという幕張メッセで毎年開催される国内最大の映像・音声・照明のプロフェッショナル機器展でも展示を行い、こちらでも多くの反響を受けました。このようにテレビ局には、番組を「作る」こと以外にも、新しい技術を「作る」こともでき、それを表現する場・評価してもらえる場があります。
自動スイッチングシステムのような業務改善・自動化技術から、バーチャルなどを駆使した新しい映像表現、配信を用いた新しいビジネス等々、テレビ局の取り組むべき開発案件はまだまだたくさんあります。プロフェッショナルな方々と一緒に、自ら考えて作ったモノを使って、自らコンテンツを作ることもでき、多くの人に届けられる、これはテレビ局の魅力だと思います。

Inter BEE 2023の出展を終えて(テレビ朝日・テレビ朝日クリエイト・TSPの共同出展チーム)

Inter BEE 2023の出展を終えて(テレビ朝日・テレビ朝日クリエイト・TSPの共同出展チーム)

■テレビ朝日技術局 公式X(旧Twitter):https://twitter.com/tvasahi_gijutsu
■テレビ朝日技術局 公式Instagram:https://www.instagram.com/tv_asahi_gijutsu/

<「MINPO.WORK」中の人からのQ&A>

森山さんに、みなさんに代わって「MINPO.WORK」中の人が気になることを聞いてみました!

MINPO.WORK

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Q1 学生時代はどのようなことに取り組まれていましたか?

森山顕矩

森山顕矩さん

放送とは直接関係のない「半導体集積回路」の研究をし、回路の性能向上を目指していました。他にない半導体素子を用いるなど、新しい事にチャレンジしてモノを作ることが好きでした。また、アルバイトでの塾講師では、コーチングやプレゼンテーションなど今の仕事にも活きるビジネススキルの基礎を経験することができました。

MINPO.WORK

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Q2 放送局を志望したきっかけは何ですか?

森山顕矩

森山顕矩さん

素直に自分が好きなもの、楽しいと思えるものに携わりたい、と考えたのが最初のきっかけです。就職活動を通して、自分が作ったモノで多くの人に影響を与えられる仕事がしたいと思っていましたが、学業の内容的に別の業界も考えていました。そんな中、これまでの経歴などを一旦置いてみたときに、テレビ局で働きたいと思いました。

MINPO.WORK

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Q3 学生のみなさんへメッセージをお願いします!

森山顕矩

森山顕矩さん

テレビ局は皆さんの「好き」や「やってみたい」という想いを受け入れることのできる場所です。番組作りはもちろん、様々な分野で活躍できるチャンスがあります。まずは興味を持った分野や技術があったら、手を動かしやってみる事が大事だと思います。そうやって作っていったモノを多くの方に見てもらえるという事はとてもやりがいがあり、率直に楽しいです。これからの新しい時代のテレビ局で、是非一緒に想いをカタチにしましょう。

MINPO.WORK

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ご回答いただき、ありがとうございました!

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